ここまでの富士山三昧は初めて。

新型コロナ感染状況の落ち着きと、
インバウンド再開の狭間を狙って河口湖方面へ。

過去クルマで巡ったことは何度もあったが、
鉄道とバス、そして河口湖畔を歩く機会は今回が初めて。
徒歩でないと見えてこないことは多い。

まずは忍野八海へ。
流石に日曜日の人気スポットだけあって、
そこそこの人出だったが、
インバウンドが再開されれば
恐らくこんなものでは済まないはず。
所々雪が残る中、湧水の美しい池は堪能できた。

この日、昼過ぎの富士山はずっと雲を纏っていた。
極寒の中、遅れがちなバスには閉口。

陽が落ち、湖畔の宿に明かりが灯り、
静かな風景に星と雪明かりの富士山と、
控えめなイルミネーションも確認できた。

家原利明さんの作品展示『こわすのはかんたんだからね』へ。

会場で完成された作品が観られるのは、
額装された写真と制作風景の動画の中のみ。
実際に目の前にあるのは、それが“こわれた”ものだ。

かつて作品だったそれらは、
地元一宮で作られたハイブランドにも使用される
高級服地に描かれた作品の断片。
蛍光色の塗料を纏ったモノトーンの布は、
緻密な織と柔らかさからその上質さが窺える。

かつてこのノコギリ屋根の工場でも数多くの機織り機が、
夥しい量の繊維製品を世に生み出したことだろう。

ただ、この場所は壊れることなく新たな価値を与えられた。
『エキノコ玉ノ井』。

訪れた者は完成品を見ることができない展示を通して
“壊すこと”の容易さと“残すこと”の難しさ、
そして何より“残すこと”の重要さを実感させられることになる。

新調されたスケルトンの壁の前はローカル線の終着駅。
列車到着の数分後には始発駅に姿を変え
2両編成の赤い電車は反対方向へ滑り出す。
その当たり前のことが続いていることもまた
この展示のコンセプトに繋がっているのだ。

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